最終更新日:2025年7月3日
「警告しても、嫌がらせが止まらない」
「従業員が心身ともに限界を迎えている」
「もう、話し合いの余地はない。法的措置に踏み切るべきか…」
度重なる悪質な要求に、経営者として、あなたは今、重大な決断を迫られていることでしょう。その怒りと、従業員を想う心は、経営者として当然のものです。
しかし、「法的措置」は、時に諸刃の剣となります。使い方を誤れば、多大な時間とコストを浪費した挙句、会社がさらなるダメージを負うことにもなりかねません。
この記事は、あなたのその「覚悟」を無駄にしないため、そして、会社と従業員を本当に守り抜くために、法的措置という最後のカードを切る前に、経営者として必ず確認すべき3つの最終チェック項目を提示します。
チェック1:証拠は「第三者が疑いようもなく」客観的か?
法的な場で最も重要視されるのは、当事者の「感情」ではなく、客観的な「証拠」です。
- □ 録音・録画データは存在するか?
- 通話録音はもちろん、可能であれば防犯カメラの映像など、暴言や威圧的な態度が記録されたデータはありますか?(※通話録音の際は、事前のアナウンスが望ましい)
- □ やり取りの記録(5W1H)は、時系列で整理されているか?
- いつ、誰が、どのような要求をし、会社側がどう対応したか。そのやり取りが、担当者の主観を排し、事実のみで記録されていますか?
- □ 脅迫的なメールや手紙、SNSの投稿などは保全されているか?
- スクリーンショットだけでなく、可能であればURLや元データも確保できていますか?
- □ 他の従業員や顧客など、第三者の「証言」は得られるか?
- 特定の担当者だけが被害を訴えている、という状況になっていませんか?
【経営者の視点】
これらの証拠が不十分なまま法的措置に踏み切ると、「言った言わない」の水掛け論となり、時間と弁護士費用だけが浪費される最悪のシナリオに陥るリスクがあります。
チェック2:社内の「警告プロセス」は、適切に踏まれているか?
裁判所は、企業がいきなり法的措置を取ったのか、それとも段階的かつ誠実に対応したのか、というプロセスを非常に重視します。
- □ 現場レベルでの「口頭での警告」は記録されているか?
- 「それ以上の言動は、弊社として看過できません」といった、管理職による明確な警告の事実と日時が記録されていますか?
- □ 「書面での最終警告」は、内容証明郵便で送付したか?
- 「本書面到着後も同様の行為が続く場合、やむを得ず警察への相談、または法的措置に移行することを、ここに最終通告いたします」といった内容の書面を、配達証明付きの内容証明郵便で送付しましたか?これは、警告したという事実を法的に証明する上で極めて重要です。
- □ サービスの提供停止など、毅然とした対応は実行済みか?
- 警告後も改善が見られない相手に対し、取引やサービスの提供を停止する、といった社内での最終対応は完了していますか?
【経営者の視点】
これらのプロセスを適切に踏むことで、会社の対応が「感情的、突発的なものではなく、段階を踏んだ上での最終手段である」ことを証明でき、法的な正当性が格段に高まります。
チェック3:被害従業員の「心のケア」に、一点の曇りもないか?
これは、倫理的な観点だけでなく、会社の法的リスクを管理する上で、最も重要なチェック項目の一つです。
- □ 産業医やカウンセラーとの面談を、会社として公式に案内・推奨した記録はあるか?
- □ 当該従業員を、一時的にでも顧客対応から外すなどの「配置転換」は行ったか?
- □ 有給の「特別休暇」の取得を、会社として積極的に促したか?
- □ 上長による定期的な1on1など、精神状態を気にかけていた客観的な記録は存在するか?
【経営者の視点】
万が一、これらのケアを怠っていた場合、相手方の弁護士から「従業員の精神的苦痛は、当社の顧客の行為だけが原因ではなく、会社の安全配慮義務違反(不十分なケア)にも起因する」と反撃され、会社が逆に訴えられるリスクすら発生します。従業員を守ることは、会社の法的防御を固める上で不可欠なのです。
「法的措置」は、真のゴールではない
全てのチェック項目が「YES」であったなら、あなたは弁護士に相談する準備ができています。
しかし、覚えておいてください。たとえ裁判で勝訴しても、そこには多大な時間と費用、そして従業員の精神的な負担が残ります。
真の勝利とは、訴訟に勝つことではありません。
悪質なハラスメントを未然に防ぎ、万が一発生しても、従業員が傷つくことなく、組織として毅然と対応できる「文化」と「仕組み」を社内に構築することです。
従業員一人ひとりが、交渉や傾聴のスキルを身につけ、プロとして対応できる。
管理職が、迷いなく盾となり、適切なプロセスを実行できる。
Livelyは、法廷闘争という「非日常」ではなく、日々の現場を強くしなやかにする「日常」を、研修とコンサルティングを通じて、貴社と共に創り上げます。